〈資料庫〉介護施設の利用料、大幅増 『コロナ騒ぎ・資産の掌握と高齢者人口の削減』
朝日新聞デジタル介護施設の利用料、大幅増 月最大6.8万円 低所得者向け補助縮小 対象27万人見込み
2021年8月15日 5時00分
介護施設の利用料 8月からどうなる
特別養護老人ホームなど介護保険施設に入居する高齢者のうち、一部の人が支払う利用料が8月から大幅に上がる。所得の低い人向けの食費・部屋代の補助が縮小されたためだ。負担増の影響は、在宅介護の人が使うショートステイ(短期入所)にも及ぶ。
補助は住民税非課税世帯が対象。今回の見直しで、補助を受ける要件となる預貯金の上限額(有価証券や投資信託なども含む)が引き下げられた。従来は年金などの収入額にかかわらず単身世帯は1千万円(夫婦世帯2千万円)だった。8月から収入に応じて単身世帯で650万~500万円(夫婦世帯1650万~1500万円)となり、補助対象外になる人がでる。
対象から外れると、食費や部屋代がすべて自己負担になる。施設の種類や部屋のタイプで異なるが、最大で月額約6・8万円の負担増になる見込みだ。
引き続き補助を受けられる人の中にも、食費への補助が減って負担増となる人がいる。住民税非課税の施設入居者(東京23区・単身世帯で収入が年155万円以下)のうち、収入が年120万円を超す人は、月額約2万2千円の負担増だ。
ショートステイ利用者の場合は年120万円以下の人も含め、生活保護利用者などを除いて食費が値上げとなる(日額210~650円)。厚生労働省によれば、補助を利用する人は約100万人(2018年度末時点)。今回の見直しで約27万人の負担が増えると見込まれている。20年度と21年度の予算を比べると、国費ベースで約100億円が削減できるという。
見直しの趣旨は、在宅で暮らす人との負担の公平性を図ることだ。介護費用の増加も影響している。介護保険の総費用は00年度の3・6兆円が21年度(予算ベース)には12・8兆円に増加。今年4月には、65歳以上が支払う介護保険料の基準月額(21~23年度)が全国平均で6千円を超えた。
厚労省は、食費や部屋代の負担が増えて生活が厳しくなった場合は、社会福祉法人が実施している利用者負担軽減制度を使える場合がある、と案内している。
■「なぜ一気に」先行き不安
「月2万2千円近い値上げは大きい。憤りを感じています」
金沢市の特別養護老人ホーム「やすらぎホーム」で母親(97)が暮らしている男性(73)は話す。母が受け取る亡き父の遺族年金が年120万円を超すため、8月から食費への補助が減った。2人部屋で月額6万円前後だった利用料(介護保険の自己負担や食費・部屋代、雑費)は、8万円以上に増える。
同じ法人が運営する同市の「なんぶやすらぎホーム」に母親(87)が入居する男性(61)も「なぜここまで一気に負担が増えるのか」。母の預貯金が基準の500万円を上回り、補助が受けられなくなった。個室で月額約10万円だった利用料は、月4万数千円の値上げになる計算だ。
やすらぎホーム相談員・今宮洋之さんによると、特に負担増の影響が心配されるのは、例えば夫が介護施設に入居し、妻が自宅で生活しているといったケース。施設にいる夫の年金が支えになっている人がおり、暮らしが厳しくなる懸念があるという。
富山市の特養ホーム「しらいわ苑」の松尾守施設長が懸念するのは、コロナ禍で経済的苦境にある介護家族が少なくないことだ。「机上の計算で支払い能力があると線引きしても、家庭の事情で滞納に追い込まれる人が出てくる恐れがある」と話す。
在宅の要介護高齢者や家族にも影響は及ぶ。介護施設のショートステイ利用者も対象になるからだ。
企業や個人の介護離職防止支援事業に取り組む埼玉県の和気美枝さん(50)は、認知症で要介護5の母(81)の在宅介護を続けている。和気さんは6月、補助対象となる人の預貯金の上限が引き下げられるという説明を市の文書で読み、母が対象から外れることに気づいた。
補助がなくなると、母が利用する特養のショートステイの部屋代、食費は1日約1200円上がる。これまで通り1カ月に10日ほど利用すると、支出が月約1万2千円増える計算だ。
「一定の預貯金があるといっても、母の貯金は入院や施設入居が必要になった時のための備えで、取り崩すのは不安だ」
仕事と介護の両立支援の観点からも、今回の見直しに疑問を感じている。「経済的に介護サービスが使いづらくなり、介護者が介護を抱えることは『介護離職ゼロ』に逆行する」(石川友恵、畑山敦子、編集委員・清川卓史)
◆キーワード
<介護保険施設の利用料補助> 介護保険施設の入居者のうち、市町村民税非課税世帯の人向けには食費や部屋代の負担を減らす補助制度(補足給付)がある。補助額は年金収入や施設の種類によって変わる。2005年に食費・部屋代が自己負担になったのを機に導入された。15年8月に、一定の預貯金がある人や世帯分離をしている配偶者が課税されている人を補助対象外にするなど要件を厳しくする見直しがあった。
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