警察組織による「まとわり・集団ストーカー」の記録。特に「耳鳴り音」などによる直接身体に危害を与える攻撃と尾行・盗聴・盗撮などの心理攻撃について映像などを交えて説明してゆきます。追記や手直しの履歴は右サイドバー2段目にあります。

〈資料庫〉「最高血圧120未満」を目指すべきか

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「最高血圧120未満」を目指すべきか


ニューヨーク・タイムズ

2015年12月4日18時44分

血圧についての大規模な調査研究を進めていたアメリカの政府当局が9月、説得力ある結論が得られたとして研究の終了を宣言したため、現場の医師たちは戸惑っていた。

当時の発表によると、研究者たちは、人命にかかわる心臓病や脳卒中を防ぐには心収縮期の最高血圧を120未満に抑えるべきだとの結論を得た。現行のガイドライン(指針)である140~150よりはるかに低い数値だ。しかし、研究者たちは、死亡件数や心臓発作の発症などに関する重要な数字を明らかにしていなかった。

 それがこの11月9日、フロリダ州オーランドで開かれたアメリカ心臓協会(AHA)の会合で研究の結果が報告され、同時に米医学誌「ニューイングランド・ ジャーナル・オブ・メディシン(The New England Journal of Medicine)」にも研究結果が掲載された。報告によると、 今回の研究では50歳以上の高血圧患者9361人について平均3年3カ月にわたって追跡調査した。その結果、薬の服用などで最高血圧120未満を降圧目標にした患者は従来の140未満が目標の患者と比べて、死亡者数は26%少なく(後者210件に対し、前者は155件)、心不全も38%少なかった(後者100件、前者62件)。

 この調査研究を主導した医師ポール・K・ウェルトンの話だと、心臓発作、心不全、脳卒中を患ったり、あるいはその他の心臓疾患で死亡したりしたケースは最高血圧120未満の人の方が140未満よりも24%少なかった(後者319件、前者243件)。

 ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院の心臓専門医マーク・アラン・ペッファーによると、今回の研究結果は高血圧患者への対応を一変させる可能性がある。彼は、この研究にはかかわっていない。

 今回の研究結果が出る前だったら、患者が50歳以上で最高血圧が136、コレステロール値もうまく制御されていれば、「よくがんばっていますね」と声をかけてやっただろう。そうペッファーはいう。ところが今となっては、血圧の値をもっと下げる薬を処方する義務を感じる。さもなければ、「患者を命の危険にさらしてしまうかもしれない」と彼は話している。

 アラバマ大学の疫学者ポール・ムントナーの推計によると、今回の結果で影響を受けるアメリカ人は少なくとも1700万人にのぼる。

 50歳以上の高血圧患者を対象にした今回の調査研究には、高血圧に加え、他にも心臓疾患にかかるリスク(例えば喫煙の習慣や高いコレステロール値、腎疾患など)を少なくとも一つ以上抱えている人が参加した。それと75歳を超す通常の高齢者も参加。全調査参加者9361人を半数ずつに分け、一方は最高血圧が現行推奨値の140未満を目指す人、もう一方は120未満を目指す人を割り当てた。当初、この調査研究は2017年まで続ける予定だったが、研究者たちは「人命を救える可能性がある結論を得た」として、この夏、研究予定を前倒しで終えた。

 最高血圧を、 どこまで下げるべきか。ずっと以前から、医師たちはこの問題に頭を悩ませてきた。下げ過ぎると、特に高齢者の場合は、めまいや失神などの副作用を招く恐れ がある。先のAHA会合での報告によると、調査研究の過程で、120未満のグループは約5%に当たる220人に血圧の下がり過ぎによるめまいや失神、腎障 害など重篤な副作用が起きた。一方の140未満グループで、ひどい副作用が出たのは118人だった。ただし、急に立ち上がった時の血圧低下による副作用の 発症は、実際には最高血圧の目標値が高い人の方がより頻繁に起きることがわかった。

 「副作用を招く問題があるとしても、全体の死亡率が27%低下したことを考えれば、リスクより利点の方が大きい」。ウェーク・フォレスト・バプテスト医療センターの生物統計学者で今回の中心的な研究者の一人デイビッド・M・レボシンは、そう話している。

 最高血圧を120未満に下げるには、服用する降圧剤を平均1.8種類から2.8種類に増やす必要がある。もっとも、最近はほとんどの降圧剤は価格が安くなっており、ジェネリックもできている。

 今回の研究結果を踏まえ、最高血圧の数値をいくつに設定するかはAHAのガイドライン委員会が決めることになる。

 そこでの問題の一つは、今回の研究対象には含まれていなかった糖尿病患者の血圧をどうするかだ。以前、糖尿病患者の最高血圧を120未満に保ちつつ血糖値を厳しくコントロールした小規模なテストを実施した例があるが、そのテストでは心臓発作や死亡率を下げることはできなかった。もう一つは、50歳未満の若年層や、50歳以上で高血圧の他に病気のリスクを抱えていない人への対応をどうするかという問題である。

 「それには、まだ議論の余地がある」とクリーブランドのケース医療センター高血圧部長ジャクソン・T・ライトはいう。今回の研究メンバーの一人で、ガイドライン委員会にも関係している。

 新たなガイドランで目指すべき最高血圧値を120未満に設定するとしても、医師たちには課題が残る。そう指摘するのは、ボストン大学医療センターの医師アラム・V・チョバニアンだ。今回の米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」にもコメントを寄せている彼の話によると、高血圧患者の3分の1ないし2分の1は最高血圧値が現行推奨値の140~150を超えているのだ。

 他にも問題点を指摘する高血圧専門家がいる。アルバート・アインシュタイン医科大学(ニューヨーク)の血圧専門医マイケル・アルダーマンは、今回の研究結果をもとに計算すると、(最高血圧を120未満にすることで)避けられる心臓発作や脳卒中、あるいは心不全は年に千人当たり6人になるという。これでは、患者にどう説明すれば120未満という数値目標を納得してもらえるか難しい。「まったく無害か、1回だけの安全なワクチン接種のような処置ですむのなら、悩むことはない。しかし、まあまあ健康な人が、この先何十年間も降圧剤をのみ続けることになるのなら、どうすべきかの診断はさらに難しい」

 エール大学の心臓病学者ハーラン・クルムホルツは、今回の研究結果には興奮を覚えるとしながらも、目標とする最高血圧の低い数値設定を強制すべきではないといっている。120未満にした場合、「何らかのリスクを伴う」からだ。望ましい数値と目標について、医師は患者とよく話し合う必要があると彼はいうのだ。(抄訳)

(Gina Kolata)

(C)2015 The New York Times(ニューヨーク・タイムズ)

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